今日のフランスのイブニング・ニュースはこんなタイトルで始まった。
”ディオールが、人種差別的発言をしたジョン・ガリアーノを解雇する、と今日の午後発表した。”
ビックリしたのなんのって...
こんなことが(と言っては失礼だが)テレビのトップ・ニュースになること自体日本ではありえないことなのだが(もし日本でTAOがComme des garcons を首になったから、といって誰が気にするであろうか?)、本当に何度も同じフレーズをアナウンサーを伝えているのを見て、ただ事ではない、と思った。
25日にこの事件がフランスのメディアに公になった後、”どうかご加護を☆”と願っていた私だったが、自体は思わぬ方向に進んでいた・・・私の知らないところで。
実は28日に、ガリアーノがマレで酒を飲んで、ぐでんぐでんに酔っぱらっているところをある外国人がフィルムを回していた。それは二人連れ(少なくとも英語を話せる)女の子たちで、面白がって色んな質問をし、ある意味ガリアーノを笑い物にしていた。
こんなことは、酔ってる人間なら誰にでもあることだと思うのが、あれほど酔っぱらっていると決して何を言ったかなど覚えてないだろう。
そしてかなりの誘導質問のようにも思える。
そしてこんなパーソナルにとったビデオをあろうことにも、世界中にViewerのいるYou tubeに投稿したのだ☆!!
これには、態度を決めかねていたディオールも逆上。
これ以上彼を保護して、逆にブランド・イメージを傷つけかねない、として(本当にそんなコメントを残している)ガリアーノを解雇すると、翌日のフランス時間の今日(3月1日)に声明を発表したのだ。
フランスの国営放送TF3のニュースでは、以下のように報道された。
”クリスチャン・ディオールが、クリエイティブ・ディレクターであるジョン・ガリアーノが人種差別的暴言をして逮捕された後態度を決めかねていたが、28日某インターネット・サイトに、その事件が起こる直前マレのカフェで”I love Hitler ! -私はヒットラーを敬愛している!-”と言った彼の様子がビデオに収められた様子が公開された。その直後にディオールは、法廷においてこの人種差別的発言をしたデザイナーを囲うことでのブランドと会社イメージが傷つけられるのを恐れ、本日の急な解雇へと踏み切った。パリは今ファッション・ウイークの直前だが、この金曜日ディオールのショーはこのクリエイティブ・ディレクター(ガリアーノ)なしで向かうこととなる・・・”
そして彼の15年に及ぶディオールでのキャリアを称えるように、今までのオートクチュールとプレタ・ポルテ(前回)の様子のビデオをオマージュのように流していた。
まるで彼のキャリアが”終わった”ということを告げるかのように。
本当にこの事は、心から残念である。あらゆる意味においても。
もしこのガリアーノの暴言の様子に興味ある方は、下のYou tubeからも見える。
だが、とっても後味の悪い気分になることは確かだ、ということは最初に言っておこう。
( 本当に彼は、彼が”憎んでいる”とこのビデオ中で言っている”醜い人々”異常に醜い気がする・・・ )
このビデオがいつまで公開されているのかはわからないが、これが本当に”彼を首にする”決め手となってしまった。
そして、アカデミー賞でオスカーを受賞し、授賞式で一度はディオールのドレスを着る予定だった、ユダヤ系女優、ナタリー・ポートマンがこのビデオを見た後、以下のようなコメントを残したことも、ブランド・イメージを一番に大切にするディオールにとってかなりの痛手であったようだ。
“In light of this video, and as an individual who is proud to be Jewish, I will not be associated with Mr Galliano in any way. I hope at the very least, these terrible comments remind us to reflect and act upon combating these still-existing prejudices that are the opposite of all that is beautiful.
‐ このビデオに関して、ユダヤ人であることをとても誇りに思っている一個人として言うと、これ以上ジョン・ガリアーノ氏と今後一切なんの関係をもたない、ということである。そして私は、少なくとも、この美しい人々に対して、これほどまの偏見が現代においても執拗に存在し続けている、ということを、このコメントによって知り、この事実に対して深く考え、戦わなければならない、ということに再び気づかされたのである。‐ ”
この偉大なる才能を、こんなバカなことで失うのは、本当に現代ファッションの歴史においても、昨年アレキサンダー・マックイーンを失ったのと同様、最大の痛手になるのは疑いの余地がない・・・。
しかしこの、ある時代を作り上げてきた、ファッション界の寵児たちが次々と不慮の事故や出来事において追われて行くのをみていると、ひとつの時代が終わりを告げているように、残念ながら思えてきてしょうがない。
私自身、彼らに憧れてセントラル・セイント・マーチンズ美術学校のファッション学部に入った。
ガリアーノはすでにかなり有名であったが、マックイーンは卒業直後。
同じクラスにマックイーンとその前の年までつきあっていた男の子までいた。
いわば″ Galliano & McQueen wanabees "たちの集まり。
誰もが彼らのようになりたいと強く願っていた。
しかし、”ひとつのことに優れていれば、あとはどうでもよい。”というような英国の風潮の中で、いくら才能があっても、本当に人間的に優れているかどうか、疑われるようなクラスメイトは数々いた。
そのメディアを通じて我々のイメージして見る”姿”と、実際の”姿”とはかけ離れている場合が多い。
今回の出来事、事件はそれを象徴しているかのようだ。
そして、”普通の人でよかったかも・・・”とそれを見て思ってしまう私。( ”!???”という意見もあるかもしれないが・・・^^;))
最後に、これ以上(少なくとも裁判の終わる数年間は)見られないであろう(そしてディオールでは永遠に・・・)ガリアーノによる最後の2011年春夏オートクチュール・コレクションを彼の長年のディオールでのキャリアに捧げるためにお届けする。
( しかし失うには美しすぎる・・・・ sign.... )
そして、本当に最後になったが、このニュースを見て、多少とも不快な気分になった方もいるであろう。
そんな方のために(といってはなんだが・・・)ジュエルの次の曲を送る。
Jewelはこの曲の中で、”You hate her because she's a piece of you ... - あなたはきっと彼女が自分の分身のように見えたから、そんなにも憎んでいるんでしょう・・・"と歌っている。
私は、ガリアーノだけではなく、彼を憎いと思う人々にもすべて、”醜いもの”、”ゲイ”、そして”ユダヤ人”、すべてのものに対して不条理な”憎い”という思いを抱く人に対して作った、この歌を心から捧げたいと思う。
- Watch out what she's singing, everyone ... He could be in every one of you . -
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